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【書評】『新版 組織行動の考え方』

書評

🏢 出版社:東洋経済新報社
📖 タイトル:組織行動の考え方
🤵 著者等:金井壽宏、高橋潔、服部泰宏

目次

CHAPTER0
なぜ組織行動を学ばなければならないのか

PARTⅠ 組織のなかの個人
CHAPTER1 一人ひとりの違いを知る
1 人間の能力とは
2 パーソナリティと仕事の向き・不向き
3 コンピテンシーという名の仕事能力
4 コンピテンシーの理論的・実践的定義
5 モデル化のアプローチ
6 仕事に熟練する
CHAPTER2 働く個人の初期値を見定める
1 採用活動の成否の基準
2 採用活動のフロー
3 募集についての考え方
4 仕事にかかわる精緻化見込みモデル
5 採用活動の新機軸
6 面接の精度を上げる
CHAPTER3 キャリアを建築のように美しくデザインする
1 キャリアという発達段階
2 組織の外でのキャリア
3 キャリアトランジションの理論
4 コーピング(対処)のための4Sシステム
5 目に見えないものをデザインする視点
6 キャリアデザインは個人にとっての戦略である
7 キャリアのデザイナーは誰か

PARTⅡ 組織のなかの人間心理
CHAPTER4 モチベーションの迷宮への招待
1 モチベーション理論の迷宮
2 経済的モチベーション論
3 目標設定理論
4 わが国を形づくった偉大なプロジェクトを読み解く
5モチベーションの「夢理論」
ケーススタディ
CHAPTER5 職場のウェルビーイング
1 満足した労働者は生産性が高い
2 職務満足と生産性についての事実関係
3 仕事についての満足のあり方
4 職務満足の遺伝子決定論
5 知性と満足の複雑な関係
6 仕事に熱中するエンゲージメント
7 組織への愛着を示す組織コミットメント
8 組織との適切な距離を求めて
CHAPTER6 組織に欠かせない感情とストレスのメンテナンス
1 ストレスにかかわる三つの理論
2 ストレスマネジメント
3 仕事場面の感情
4 ポジティブ心理学のアプローチ
5 三対一の法則

PARTⅢ 成果と評価の問題
CHAPTER7 仕事の成果をどう捉えるか
1 デリバラブル発想のすすめ
2 伝統的な成果の基準
3 「プロジェクトA」が明らかにしたもの
4 個人の成果を捉える職務パフォーマンス
5 仕事の成果の分布が変わる
6 バランスト・スコアカードがとる成果の視点
7 成果を追求するための大事な問い
CHAPTER8 人事評価の目のつけ所
1 評価の癖や誤りを減らす評価者訓練
2 評価者訓練の切り札
3 評価ツールのつくり込みが人事評価の質を高める
4 絶対評価か相対評価か
5 評価をめぐる西洋と東洋の思考パターン
6 短期の評価と長期の評価
7 組織のバリューを伝えるメッセンジャー
CHAPTER9 自己認識のための他社視点
1 ポジティブなフィードバックか、ネガティブなフィードバックか
2 評価に代わる1on1ミーティング
3 360度フィードバックの実際
4 フィードバックが組織にもたらすもの
5 フィードバックの目的論vs手段論
6 自己認識とフィードバックの効果
7 フィードバックの妥当性
8 自己覚知の長所と急所
9 評価とフィードバックは己を知る鏡なり

PARTⅣ 組織のなかのグループに働きかける
CHAPTER10 マネジメントとリーダーシップは双子なのか
1 マネジャーとリーダーが混同される理由
2 優れたマネジャーと優れたリーダー
3 問題解決か、問題発見か
4 組織を買えるのがリーダーの役目
5 いかなるリーダーもフォロワーである
6 リーダーはサーバントである
7 みんなでシェアすれば、リーダーシップも怖くない
8 シェアドリーダーシップという東洋の知恵
CHAPTER11 リーダーシップのリテラシーを高める視点
1 リーダーシップの三レベル
2 リーダーシップの特性因子理論と偉人説
3 リーダーシップの行動理論と不動の二軸
4 リーダーシップ条件適応理論
5 変革型リーダーシップという名の分身
6 リーダーとシップの新潮流
7 リーダーシップと脳の関係
CHAPTER12 ヨコのつながりを活かす
1 チームとは何か
2 チームが機能するための条件
3 チームの中のパワーの源泉
4 創造的チームの条件
5 組織の岩盤をチームで掘る

PARTⅤ 個を活かし、組織の力を高める
CHAPTER13 人を伸ばす組織の考え方
1 人材育成と教育訓練
2 スキル不足の社会
3 OJTを支える経験学習
4 組織が学習する
5 対話を通じて本質を学ぶ
6 学び直しのためのアンラーニング
CHAPTER14 組織に息吹を吹き込む
1 組織文化とは
2 組織文化の功罪
3 組織は慣性の法則に従う
4 組織文化の変容
5 組織開発の考え方
6 診断型と対話型の組織開発
7 ポジティブ心理学に基づく組織開発
8 組織開発のベストプラクティス
CHAPTER15 現実を変える知識創造のパワー
1 知の探究とレディネス
2 役に立つ理論とは
3 理論の共創と新しい学習のあり方
4 「知る」ことのレベル
5 ミクロとマクロのループ構造
6 知識創造のパワー


本書で紹介される数々の理論はどれもが印象深かったのですが、その一部をご紹介します。

未完の課題の想起が動機を生む「ツァイガルニク効果」

まず、動機付けの源泉としての「ツァイガルニク効果」です。

人は課題が完了したことよりも、未完の課題の方を強く想起し、その緊張が活動を持続させるエネルギーになるというものです。

この「未完の状態」が生む心理的緊張を組織の中でうまくコントロールできれば、部下の意欲を高めることも可能かなと感じました。

3つのコンピテンシーモデル設計アプローチ

本書では、コンピテンシーの設計アプローチとして、次の3つが紹介されていました。どれもイメージしやすいアプローチです。例えば人事考課表の行動考課シートを検討するときに、これらのアプローチが活用できそうというように、実務で活かせる切り口だと感じました。

  1. リサーチベースアプローチ
    高い成果を上げている社員と普通の成果の社員を比較し違いを導き出す
  2. 戦略ベースアプローチ
    経営戦略を実現するために必要な能力を想定してモデル化する。リサーチベースアプローチでは、高い成果を出す社員の行動分析に基づくコンピテンシーは、過去あるいは現在有効な能力を反映してしまうため、変化が激しい組織やはっきり見通せない将来のビジネス環境には合わない。
  3. 価値ベースアプローチ
    企業理念やビジョンやミッションという企業が目指している姿、企業独自の文化規範から具体的な行動特性に落とし込むアプローチ

心理学をベースにしたモチベーションに関する理論あれこれ

私は、自己決定理論が好きですが、いろいろありますね。体系的に整理されているので、とても分かりやすいです。

  •  内発的動機づけ
  •  自己決定理論
  •  スタディモチベーション モチベーションの自己調整
  •  フロー理論
  •  公平(衡平)理論
  •  期待理論
  •  職務特性理論
  •  ジョブ・クラフティング(認知的クラフティング含む)
  •  目標設定理論

ヨアフ・ガンザックの研究

知的レベルと職務満足との間には、職務の複雑さ・多様さが介在していることが明らかにされている。仕事の内容が複雑で多岐に渡る職務では、知的レベルと職務満足の間に正の相関がある。仕事の内容が提携で単調で面白くなければ、知的レベルと職務満足のとの間に負の相関がある。

つまり、優秀な社員を採用しても、単調業務を行う部門に配属していては、職務満足は高まりようがないということです。ですが、実は結構な企業で当てはまる”あるある”ではないでしょうか。

本書には、今日からでも人事・組織マネジメントに活用できる実践知が満載です。

  • 採用面接における「認知バイアス」への対処
    面接官は、面接開始後およそ四分以内で評価を固める「即時的決定」や、欠点に目が向く「あら探し」など、多くのバイアスに晒されています 。これらに対処するには、面接の手順や質問内容、評価の仕方等を事前に定める「構造化面接」の手法も参考にできそうです。
  • リーダーシップとマネジメントの使い分け
    特に上位職になればコンセプチュアルな側面で、組織を牽引するようなリーダーシップが求められます。ですが、リーダーシップとは必ずしもマネージャーだけが発揮するものではありません。リーダーシップとは部長や課長という職位に伴うものではなく、それぞれの立場で発揮されるべきものです。
    翻って考えると、日本企業はミドルマネジャー以下にリーダーシップ研修を実施している企業は多いでしょうし、新入社員にまでリーダーシップのコンピテンシーを求めます。一方で、トップマネジメント層は、既に素養が身に着いているとしてリーダーシップ教育を行っていない企業が多いように思います。しかし、本当に必要なリーダシップが身に着いているのでしょうか?どの階層にもリーダーシップは求められますが、むしろトップマネジメントこそ正しいリーダーシップのあり方を学ぶべきではないでしょうか。
  • チームを機能させるポジティブ感情の比率
    「ポジティブ感情とネガティブ感情ではネガティブの方が強いので、意図的にポジティブの比率を高める必要がある。この比率が「3:1」を超えてくれば、チームに高揚感や成果をもたらすことにつながる。また、成果を出すチームは、メンバーが多くの意見を出し合い、自分の考えを主張する。否定的な発言に対してもクリエイティブな反応をする。一方、成果の出ないチームでは、そもそも会話の量が少ないのに加えて、否定的な言動が目立つ」ということも紹介されています。
    この「ロサダの分析」も即実務に活かせそうです。

特にこれをさらに深掘りすれば、組織開発にものすごく活きるのでは?と感じたのが、「マイヤーの研究」として紹介されていた「会社との強い精神的紐帯によって愛着を感じる人だけが会社を引っ張っていく」「会社に強い関心を持たず、残りの人生を何とか無事に切り抜けようと居残りを決め込む人の場合には、組織へのコミットメントの高さが、逆に会社にとって災いを呼ぶ」というものです。

本書を読んだ直後における私の理解は、次のとおりです。

  • 経営や人事は、やはり衛生要因に依存せず、動機づけ要因によってモチベートすべき
  • いわゆる”静かな退職”的な人材の精神的紐帯が強くなってしまうと、むしろ会社には悪影響が生じる
  • そのため、経営や人事が精神的紐帯を強めようとする施策を打つ場合は、そのターゲットを適切に選別することも必要

このマイヤーの研究は、もう少し掘り下げて勉強したいところです。

馬を水辺に導くことはできるが、水を飲ませることはできない

組織行動論を学ぶ意義は、人を無理やり動かすことではなく、人々が自ら「水を飲みたくなる」ような、内発的動機付けが最大化される環境をデザインすることにあります

本書は、組織の「風土」や「文化」という形のないものを、確かな理論の力で形作り、変革していくための羅針盤となる一冊です。

とてもお勧めです、ぜひご一読ください!

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