越境学習とは
越境学習とは、自分の専門分野以外の様々な分野を学び、異分野の人と交流することで、これまでとは異なる視点や発想を獲得する学習方法です。
新しいアイデアを生み、新しい挑戦をしていかねば、組織は活性化しません。
ですが、自社という同質性の高い集団の中で、同じ業務を繰り返しているだけでは、社員の学習機会は限られ新しい発想は生まれにくいので、自社以外で学ぼうという考え方です。
他社出向や海外赴任が代表例でしょう。他にも、副業や兼業、ビジネススクールへの通学、ボランティア活動やNPO活動、ワークショップや勉強会への参加なども越境学習の一つといえます。
最近では人的資本経営や人的資本開示の文脈で研修に費用投下している企業も多く、ビジネススクールの受講料負担を行っている企業も増えてきているのではないでしょうか。ビジネススクールは異なる会社の皆さんが議論し学ぶ他流試合の場ですので、まさに越境学習といえるでしょう。
また、プロボノと呼ばれるボランティア活動も越境学習の一つとされています。プロボノとは「pro bono publico(公共善のために)」というラテン語の略語で、自分のスキル、専門知識や経験を活かしたボランティア活動です。
メリットと具体例
では、越境学習のメリットとは何でしょうか?ここでは、次のように整理してみます。
①視野の拡大とイノベーションの促進
例: Webデザイナーがマーケティングを学ぶことで、ユーザーの行動心理を理解し、
より効果的なウェブサイトデザインができるようになる。
例: 営業マンが心理学を学ぶことで、顧客のニーズを的確に捉え、
成約率を向上させることができるようになる。
②自己成長とキャリア形成
例: 開発担当のシステムエンジニアがプロジェクトマネジメントを学ぶことで、
チームをまとめ、プロジェクトを成功に導くスキルを身につける。
例: 看護師がコーチングを学ぶことで、患者とのコミュニケーションを円滑にし、
患者自身の健康管理能力を高めるサポートができるようになる。
③人脈形成とコミュニケーション能力の向上
例: プロボノに参加することで、異業種の人々と交流し、
多様な価値観に触れることができる。
例: オンラインサロンに所属することで、共通の趣味を持つ仲間と交流し、
情報交換やコラボレーションを行うことができる。
④適応力と柔軟性の向上
例: 海外インターンシップに参加することで、異なる文化や言語環境に適応する力を
身につける。
例: スタートアップ企業で働くことで、変化の激しい状況に対応する柔軟性や
問題解決能力を養う。
⑤モチベーションの向上
例: 陶芸教室に通い始めることで、新しい趣味を見つけ、創作活動を通して
リフレッシュできるようになる。
例: 歴史小説を読むことで、今まで知らなかった世界に触れ、知的好奇心を刺激される。
デメリット
①時間的・経済的制約
他社出向などを除き、本来業務とは別に時間を使わねばなりません。
そのため、時間管理が重要になります。
また、ビジネススクールの授業料、セミナー参加費や書籍代などの費用が発生する
ケースもあります。
②ストレスや不安
異文化や新しい環境に適応することの難しさや、人間関係の問題が生じる可能性があります。
③成果の不確実性
学習成果がすぐに現れるとは限らず、投資に見合う効果が不明確な場合があります。
④情報過多
あまりにも多くの分野を性急に学ぶと、効果につながらなかったり、
情報整理が追い付かない可能性もあります。
越境学習を成功させるには
・明確な目標を設定する
何のために越境学習をするのか、目的を明確にする。
・関心のある分野を選ぶ
無理なく楽しく学べる分野を選択する。自分が関心を持てなければ続きません。
・学びをアウトプットする
学んだことを言語化したり、人に説明することで、知識の定着が図れます。
・仲間を見つける
同じように越境学習をしている仲間と交流すれば、モチベーションを維持できます。
まとめ
ここまで越境学習について整理してきました。
メリットはわかるし、越境学習をさせられるものならさせたいと考えている経営者や人事の責任者は多いでしょう。ただ、現実問題として、自社の従業員に本業以外の学習を行わせるような余裕がないというのが実態ではないでしょうか。もうここは経営判断にならざるを得ませんが、スモールスタートを目指すなら、副業解禁やビジネススクールを活用した研修制度の導入から始めるのも一つだと思います。
もしそれも難しければ、自社内で部門を跨いだ部署異動を促進するのも一つです。従来から行われてきた異動による仕事や環境の変化は、まさに越境学習に該当します。
こう考えれば、自社で越境学習も実践できそうな気がしませんか。
未知の世界へ挑戦してみることって大事ですよね。
ぜひトライしてみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

