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書評:『一分で話せ』『1分で話せ②超実践編』

書評
  • 📖 タイトル:1分で話せ
  • 🤵 著者等:伊藤 羊一 
  • 🏢 出版社:SBクリエイティブ
  • 📖 タイトル:1分で話せ②【超実践編】
  • 🤵 著者等:伊藤 羊一 
  • 🏢 出版社:SBクリエイティブ

『一分で話せ』 目次

はじめに
第1章 「伝える」ための基本事項
第2章 1分で伝える―左脳が理解するロジックを作る
第3章 相手を迷子にさせないために「スッキリ・カンタン」でいこう
第4章 1分でその気になってもらう―右脳を刺激してイメージを想像させよう
第5章 1分で動いてもらう
第6章 「伝え方」のパターンを知っておこう
第7章 実践編

『1分で話せ②超実践編』 目次

はじめに
第1章 1分で話すためのピラミッド
第2章 ピラミッドで考えればコミュニケーションはわかりやすくなる
第3章 実践編「伝える」基本
第4章 実践!説得・提案・プレゼンのルール
第5章 実践!説明のルール
第6章 実践!交渉のルール
第7章 実践!会議・議論・ディスカッションのルール
第8章 実践!身の回りの「伝わらない」をなくす
第9章 実践!ピラミッドから資料・文章をつくる

結論:「人は正しいから動くのではなく、心を揺さぶられるから動く」

「一分で話せ」「一分で話せ②超実践編」この2冊の最も重要な論点は、伝達の目的が「相手を動かすこと」にあると定義し、そのためには「論理」だけでなく「感情」に訴えかけることが必要だという点です。

  • イメージの共有の重要性
    正しい情報や完璧なロジックだけでは人は動かず、「ビジュアルを見せる」か、「例えば」という具体的な事例を用いて「聞き手にイメージの中に入り込んできてもらう」ことが、説得力を飛躍的に高める鍵とされています。
    「想像してみてください」と促す手法が、話し手と聞き手の間で強力な共感を生み出すための技術として紹介されています。
  • メタ認知(自己の俯瞰)
    優れたビジネスリーダーの能力として挙げられる「メタ認知」は、単に技術的な要素を超え、自分の発言が相手にどう伝わっているかを客観的にチェックし、微調整しながら話す姿勢そのものを指します。これは、双方向のコミュニケーションにおいて主導権を握りつつ、相手を尊重するための基盤となる考え方です。
  • 「聴く力」の使い分け
    『超実践編』で触れられている、問題解決のための左脳型「聞く力」と、メンバーのコンディションを整え活力を引き出すための共感する「聴く力」の使い分けは、マネジメント層にとって非常に重要です。理詰めで返すだけでは信頼関係が築けないという指摘は、現代の多様な働き方におけるリーダーシップの本質を突いています。

本書の教えは、日常の報告・連絡・相談から、重要なプレゼンテーション、部下との1on1まで、幅広いビジネスシーンに具体的な示唆を与えてくれます。

  1. プレゼン・会議の準備への示唆
    • ゴール設定の明確化
      準備段階で「相手に何をして欲しいのか?」を言語化し、徹底的にシンプルでカンタンな言葉を選ぶ習慣をつけます。
    • イメージ戦略の徹底
      プレゼン資料やトークスクリプトを作成する際、「成果と未来に関する話」と「例えば(具体的な事例)」を必ずセットで盛り込むことで、ロジックの完璧さだけでなく、聴衆の心に火をつけることを目指します。
    • 練習による再現性の確保
      事前に録音して練習するというシンプルな行動をルーティン化することで、本番での声の強弱や間合い(普段より3秒ほど長く間を取る)といった非言語要素の精度を高めます。
  2. マネジメント・議論への示唆
    • 議論の作法の遵守
      結論と根拠を伝えるピラミッドストラクチャーで対話を開始し、相手のピラミッドを理解した上で、共通点と相違点を見つけ、歩み寄り、改めて結論を出すという一連のステップは、建設的な議論を成立させるために活用できます。
    • 傾聴による関係構築
      メンバーとの対話では、ただ問題解決を図るだけでなく、「あの人に言っても分かってくれる」と思わせるために、まずは共感にフォーカスした「聴く力」を意識的に発揮します。Zホールディングス常務の1on1の例にある「もう一度聞きますね」といった質問は、相手の考えを深掘りし、同時に尊重を示す有効なツールとなります。
  3. コミュニケーション全般への示唆
    • キーワードによるインパクト
      人は話の8割を覚えていないという前提に立ち、言いたいことを端的に表す「キーワード」でインパクトを残すことで、記憶への定着を図ります。

『一分で話せ』シリーズは、「相手を動かす」という明確な目的のために、準備の徹底から、伝え方の構築(ピラミッド、SDS、PREP、PCSF)、そして感情に訴えかけるための非言語的・修辞的なアプローチ(視線、手振り、間合い、例示によるイメージ喚起)までを体系的にカバーしています。

特に、伝える技術の土台にある「自分の想い」、そして不完全な情報の中でも「自分の軸」で結論を出すことの必要性を説いている点は、仕事に活用できるのではないでしょうか。

私自身、プレゼンを聞くことも多くありますが、想いの乏しいプレゼンは、それが言葉の端々に出てきてすぐに分かります。ですので、筆者の指摘にはとても共感します。ですが、いざ自分がプレゼンする立場になった時に、どこまで想いを込めてプレゼンできているか?と振り返るとできていないと言わざるを得ません。

改めて「想い+ロジック」こそが、相手を動かしていくのだと感じました。

本書の教えを実務に活かすには、まず「何のために伝え、相手に何をして欲しいのか」を徹底的に問うことから始めるべきです。そして、プレゼンだけでなく、日常の全ての会話において「メタ認知」の視点を持ち、練習を重ねることで、真の伝達力を手に入れることができるのでしょう。

伝え方に困っている全ての方にお勧めです!

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