離職者数と離職率
離職者数
離職者数概況
厚生労働省の令和5年雇用動向調査結果の概況によると、令和5年(2023年)1年間の入職者数は 8,501.2 千人、離職者数は 7,981.0 千人で、入職者が離職者を 520.2 千人上回っているとのことでした。
また、就業形態別にみると、一般労働者は、入職者数 4,497.3 千人、離職者数 4,517.6 千人で、離職者が入職者を 20.3 千人上回っている。パートタイム労働者は、入職者数 4,003.9 千人、離職者数 3,463.5千人で、入職者が離職者を 540.4 千人上回っているということでした。
令和4年(2022年)は離職者数が7,656.7千人、そのうち一般労働者が4,414.9千人だったので、パートタイム労働者が3,241.8千人でしたので、離職数は微増傾向となっています。
一般労働者と常用労働者の定義
なお、一般労働者とは、常用労働者のう4年ち、パートタイム労働者以外の労働者を指します。
また、常用労働者とは次のいずれかに該当する労働者のことです。
① 期間を定めずに雇われている者
② 1か月以上の期間を定めて雇われている者
離職率
離職率の定義
離職率は、「常用労働者数に対する離職者数の割合」のことで、次の算式で計算されます。
離職者数
離職率 =───────────────── × 100 (%)
1月1日現在の常用労働者数
(年齢階級別は6月末日現在の常用労働者数)
離職率の推移
離職率は、令和5年(2023年)が15.4%、令和4年(2022年)が15.0%です。
直近10年間の離職率は、令和3年(2021年)に13.9%と14.0%を切りましたが、この年を除き14.0%以上になっており、およそ15.0%前後で推移しています。最高は平成25年(2013年)と令和元年(2019年)の15.6%です。
令和5年(2023年)の離職率が15.4%だったので、もう少しで直近10年間の最高値を超えるところでした。
また、令和5年(2023年)の離職率を一般労働者とパートタイム労働者に分けてみていくと、一般労働者の離職率は12.1%、パートタイム労働者の離職率は23.8%です。
どの年度も一般労働者の離職率の約2倍がパートタイム労働者の離職率になっており、この傾向に変化はありません。
直近10年の一般労働者の離職率は、令和2年(2020年)に11.0%を切り10.7%になりましたが、この年以外は、すべて11.0%以上になっています。
なお、平成25年(2013年)に12.4%、平成26年(2014年)には、12.1%と連続で12.0%を超えました。
令和5年(2023年)の一般労働者の離職率12.1%は、これ以来の12.0%超になっています。
また、令和2年(2020年)10.7%、令和3年(2021年)11.1%、令和4年(2022年)11.9%で推移していますので徐々に上昇しています。
一方、令和5年(2023年)のパートタイム労働者の離職率は、23.8%でした。
こちらも令和3年(2021年)21.3%、令和4年(2022年)23.1%から上昇していますが、直近10年間の最高値は令和元年(2019年)の26.4%ですので、最高値に迫るまでの数値ではありません。
一般・パート別では、やはり一般労働者の離職率が直近10年間の最高値に迫る実績になっていますので、今後の推移が気になります。令和6年(2024年)の統計結果も注視したいですね。ただ、離職率には定年退職も含まれています。令和5年(2023年)の離職率15.4%のうち、0.7ポイントは定年を理由とするものです。
今後、団塊Jr世代が定年を迎えていくため、さらなる定年延長や継続雇用制度を進めない限り、日本の人口構造的に中期的な離職率の上昇は避けられないでしょう。

転職者が前職を辞めた理由
退職理由の傾向
厚生労働省の令和5年雇用動向調査結果の概況によると、令和5年(2023年)1年間の転職入職者が前職を辞めた理由の順位は次の通りとなっています。


「その他の個人的理由」や「定年・契約期間の満了」などを除くと、男性は9.1%が「職場の人間関係が好ましくなかった」、女性は13.0%が「職場の人間関係が好ましくなかった」となっており、男女ともに「職場の人間関係が好ましくなかった」が退職理由の1位になっています。
ここから、やはり職場の人間関係が離職率に大きな影響を与えることが分かります。
退職理由 男女別の傾向
次はこれを男女別や年齢別で分析します。そうすると、また違った傾向が見えてきます。
男性で「職場の人間関係が好ましくなかった」を離職理由として挙げたのは、19歳以下の23.0%が最多でした。次いで40~44歳の14.6%となっており、20~24歳は7.5%ですし25~29歳にいたっては6.4%です。
一方、女性では「職場の人間関係が好ましくなかった」を離職理由として挙げたのは19歳以下の22.9%が最多ですが、45~49歳の18.7%を次点として、20~24歳は13.3%で25~29歳も14.8%になっており、どの年齢層でも一定程度人間関係を重視していることがうかがえます。
ここから、男性も職場の人間関係を重視するが、女性の方が傾向が顕著であると言えそうです。
退職理由 年齢別の傾向
次にどの企業も繋ぎ止めたい20代と30代を見ていきます。

20~29歳は、衛生要因の中でも給料と労働時間などの労働条件を重視する傾向にあります。これは30~39歳の年代も同様で、特に20代の女性ではその傾向が顕著です。また、20代~30代の男性は、職場の人間関係よりも給料を重視する傾向がみられ、職場の人間関係との比較では30代よりも20代の方がより顕著な差が生じています。
離職者を減らす有効な対策とは?
この調査結果に基づいて離職対策を立案するなら、まずは次の二つへの取り組みが挙げられます。とはいえ、すべての企業が実現できるわけではありませんので、できることから、できる範囲で実行していくことが重要でしょう。
- 若手の給料の引き上げ
- 残業削減、所定労働時間の短縮、休日の増加
今回の考察結果から、職場の人間関係の改善も離職対策として有効であることはわかりましたが、これは企業によって効果的な対策方法が異なり、画一的な方法で効果を上げることは難しいので、除外しました。
企業経営は業績ありき、先に生産性向上や利益確保の目途が立たなければ、いずれも実行しがたい施策ですが、先行投資として取り組まなければ離職者は増えるばかりです。
業務に習熟した従業員の離職は大きなダメージで、人材がいなくなってしまえば、結局じり貧です。経営者にとっては非常に苦しいところですが、思い切った経営判断が求められているのではないでしょうか。
なお、今回の結果は二つとも衛生要因に関する対策になりましたが、衛生要因の引き上げは自ずから限界があります。
動機づけ要因に関しては、今回の厚労省の統計をもとに直接言及するには根拠が乏しいところですが、やはり動機づけ要員は無視できません。また機会があれば、触れたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。