ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

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本の概要

タイトル:ビジョナリー・カンパニー  時代を超える生存の原則
著者等:ジム・コリンズ(著)、ジェリー・ボラス (著)、山岡洋一(翻訳)
出版社:日経BP社


あらすじ

 「ビジョナリーカンパニー」は、長期間成功を続ける企業の特徴を分析したビジネス書で、大ベストセラーになった本です。著者であるジム・コリンズとジェリー・ポラスは、18社の企業を調査し、基本理念の重要性や企業文化、そして継続的な改善の重要性を強調しています。

 ビジョナリーカンパニーは、カリスマ的経営者ではなく、基本理念を体現する組織づくりを重視しているとし、BHAG(大胆な目標)を設定して社員全員が一丸となって目標に向かうことなどが説かれています。

 ポイント
  ① 時を告げる予言者になるな。時計をつくる設計者になれ(=仕組みを作れ)。
  ②「ANDの才能」を重視しよう。二者択一ではなく、両方を目指す。
  ③基本理念を維持し進歩を促す。
  ④一貫性を追求する。

学びと共感

ビジョナリーカンパニーは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範、ひとつの象徴的な動き、CEOの一回の発言に頼ったりはしない。重要なのはこれらを繰り返すことである。

 結構ありがちかなと感じました。一つの制度に依存してしまう、一つのアクションで問題解決を図ろうとする、一回の社長メッセージで伝わったと満足してしまうことってないでしょうか。

「正しい問いの立てかたは、これはよい方法か?ではなく、これは当社の基本理念に合っているか?である」

 何か仕組みを導入したり行動を起こすときに、きっと無意識に「自社に合っているか」と問いかけていると思います。普段の自分の判断軸を振り返っても、やはり必要な工程だったんだと腹落ちをいたしました。自社の組織文化を形作る元になる基本理念に合致していなければ、有効な打ち手とは言えませんよね。

基本理念を維持し進化させるためのポイント

ⅰ)社運を賭けた大胆な目標 (BHAG)を掲げる

 リスクが高い目標やプロジェクトに大胆に挑戦することで進歩を促す。例えば、年度予算を積み上げでつくるのか、コストや目標利益から売上を決めるか、着地予想からの伸長率でつくるかは悩ましい問題です。しかし、予算立案の方法にかかわらず、必ずストレッチすることが重要です。ビジョナリーカンパニーは、このストレッチの幅がものすごく大きいのでしょう。実行の難易度は高くはありますが、何とか見習いたいところです。

ⅱ)カルトのような文化を形成する

 「やさしく都合のいい」環境を作る必要はない。ビジョナリーカンパニーはイデオロギーの信奉と勤務成績という点でも社員に対する要求が厳しい傾向にあるということでした。むしろカルトのような文化を強化し、同質性を追求することで、特別な集団に属しているという感覚の醸成を目指しているという点です。ここでの同質性が多様性と反すると解釈するときっと誤解が生じます。ここでは社風という会社の文化的な同質性を指しています。同質的な社風(カルチャー)がベースにあり、その上に性別や価値観という多様性が乗ってくるというイメージだと理解しています。

ⅲ)多くの挑戦をして、うまくいったものを残す

 基本理念の維持や進化にまでつながっているとは意外な印象も受けましたが、会社に活力を与えるうえで、挑戦は不可欠ですし、それが進歩につながるという点では確かにそうだなと感じます。

ⅳ)生え抜きの経営陣

 社内の人材を登用し、基本理念に忠実な者だけを経営幹部にすることで基本理念を維持する。ビジョナリーカンパニーを築くという観点に立つなら今の世代だけでなく、次の世代も見据えて次代の経営者を育成することが重要ということでしたが、ここは賛否あるところかもしれません。ただ、日本を代表するオーナー企業が外部から連れてきた経営者を後継に据えたが、失敗して自らが復帰するという事例もありますし、一定の納得感はあるように思います。

ⅴ)決して満足しない

 「ビジョナリーカンパニーは将来を見通す力が優れているわけでも、成功のための特別な秘密があるわけでもない。自分自身に対する要求が極めて高い」とありました。

 ここでのポイントは「自分自身に対する要求が極めて高い」という点ではないでしょうか。少しの成功で満足せず、さらなる高みを目指して試行錯誤や改善を続けるとも言えるのかもしれません。BHAGと通ずるところがあるかもしれません。

ⅵ)一貫性

 「矛盾はガンのようなものだと考えて、すぐになくす。チームワークを基本的価値観としているのに、個人の成績に基づいて報酬を決めているのであれば、すぐに報酬体系を変えるなど、基本理念と目標とする進歩のために、会社の動きのすべての一貫性があるように心を配るべきである」と説かれています。

 また、「ビジョナリーカンパニーは基本理念を維持し、進歩を促すために、ひとつの制度、ひとつの戦略、ひとつの仕組み、ひとつの文化規範、ひとつの象徴的な動き、CEOの一回の発言に頼ったりはしない。重要なのはこれらを繰り返すことである。」とも説かれております。一貫性と継続性の乏しさを戒めるものですが、個人的に非常に刺さった部分です。ビジョナリーカンパニーならずとも、経営やマネジメンとに必須の事柄なので、ぜひ頭に置いておきたい教訓だと感じました。

まとめ

 基本理念を維持し進化させるための各ポイントは、本書を通じて特に感銘を受けた部分です。まさに正鵠を射ていると感じました。

 私自身も、エンゲージメント向上の一環で、まさに基本理念の浸透を図っている最中ということもあり、とても興味深く読めました。さすがに世界で累計1000万部を超える大ベストセラーです。出版から年数が経過していますが、色あせない名著の一つではないでしょうか。お勧めしたい一冊です。


 お読みいただき、ありがとうございました。

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