本の概要
タイトル:ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則
著者等:ジム・コリンズ(著)、山岡洋一(翻訳)
出版社:日経BP
あらすじ
「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」では、単なる「良い会社」から「偉大な会社」への飛躍を遂げた企業の共通点を分析し、その成功要因を説明しています。
<成功の鍵>
・第5水準の経営者(リーダーシップ)
謙虚さと強い意志を兼ね備え、成功は他者の功績とし、失敗は自身の責任とするリーダーシップ。
・適切な人材の確保
優れた人材を揃え、「誰をバスに乗せるか」を重視することで、組織の力を最大限に引き出す。
・最後には必ず勝つ
上司が意見を聞く機会が十分にある企業文化を作り上げる、カリスマは強みにもなれば弱みにもなる。また、どれほどの困難にぶつかっても、最後は自分が勝つという確信を失ってはならない。そして同時に自分がおかれている現実のなかで、もっとも厳しい事実を直視しなければならない。
・単純明快な戦略
自社の強み、市場の需要、情熱の3つが重なる「スイートスポット」に集中する戦略。
・人ではなくシステムを管理する(規律の文化)
厳しい現実を直視しつつも、成功への信念を持ち、継続的な改善を積み重ねる組織文化。
などのポイントが紹介されています。
ビジョナリーカンパニーで取り上げた企業は創業初期から偉大だったという立場で、偉大でない企業が偉大になることが可能かを掘り下げた内容。本書は、企業が持続的な成長を遂げるために、普遍的な原則と具体的な方法論を提供しています。飛び抜けた成功には、リーダーシップ、人材、戦略、文化、そしてテクノロジーの活用が不可欠であると説いています。
学びと共感
飛躍した企業はすべて、転換期にCEOに第5水準のリーダーに率いられていた。
本書では、”個人としての謙虚さ”と”職業人としての意志の強さ”という矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる経営者を「第5水準の経営者」と定義し、そのリーダーシップが飛躍のポイントであると述べています。
確かにこの二つを高い水準で両立できれば素晴らしいですね。職業人としての意志の強さはもちろん持たれているでしょうし、成功した起業家や中興の祖と言われるような経営者は、本当に謙虚だと感じます。インタビューでも「自分は運が良かった」「仲間に恵まれた」などと幸運が成功の要因だったと語り、自分の実力を前面に出すような話し方はされないように思えます。
しかし、皮肉なもので、権力のある地位にまでのぼりつめる際に原動力になることが多い個人的な野心は、第五水準のリーダーシップに必要な謙虚さと矛盾している。そのうえ、取締役会には、押しが強い並外れた人物を選ばなければ偉大な組織を築くことはできないとの誤った信念がある場合が多い点を考えれば、第五水準の指導者に率いられた組織がめったにない理由も簡単に理解できるとも述べられてており、とても共感をいたしました。
また、外部からの有名な経営者の招聘は企業の飛躍と逆相関にある。飛躍を導いたCEOのほとんどは社内からの昇進であったとの指摘も示唆に富んだもので、非常に興味深かったです。
誰をバスに乗せるか(適切な人材をバスに乗せ、不適格な人材をバスから降ろし、その後に行き先を決めるということ)、そして人事の決定に極端なまでの厳格さが必要。
結局、適切な経営者(陣)が重要ということで普遍の原則です。
また、報酬制度は重要だが、不適切な人材に正しい行動を引き出すためではなく、適切な人材をバスに乗せ、その後もバスに乗り続けてもらうことが報酬制度の目的であるとの指摘も共感いたしました。
では、ここでの「適切な人材」とはどんな人材なのか?については、ビジョナリーカンパニーでは、学歴・技能・知識・経験よりも、性格を重視していると述べられています。性格とは、労働観・基礎的な知能・目標達成の熱意・価値観だと説かれています。結局、人間として尊敬できる人物であることが重要だということでしょう。
また、人事に関する分析では、ビジョナリカンパニーにおける人事は、厳格な基準がまず最上部に適用され、責任が特に重い立場の者には特に厳しく適用されているとのことです。
いかがでしょう?逆になったりしていないでしょうか。。。。
ビジョナリーカンパニーでは上司が意見を聞く機会が十分にある企業文化を作り上げている。
上司が意見を聞く企業文化の作り方
ⅰ)答えではなく質問によって指導する
ⅱ)対話と論争を行い、強制はしない
ⅲ)分析はするが、非難はしない
ⅳ)入手した情報(事実)を無視できない情報に変える仕組みを作る
人ではなくシステムを管理する(規律の文化)
この部分で印象に残ったのは、「やめるべきことのリストは、やるべきことのリストよりも重要」であるという点です。”やめるべきこと”は、確かに見過ごされがちだと思います。いわば引き算的な思考ですが、日々の仕事の中では足し算的思考いなりがちで、このような視点って持ちにくいのではないでしょうか。
新技術に振り回されない
情報技術の利用は、業績の勢いの促進剤になるが、勢いそのものを作り出すわけではないと説かれています。ビジョナリーカンパニーが、先駆的な情報技術の利用によって転換を始めたケースはないということでした。
アメリカ最大の鉄鋼メーカーであるニューコアの経営幹部は「当社の成功の20%は採用した新技術によるものだが、80%は企業文化によるものだ」と語っているそうです。
今に置き換えると、新技術の代表例が「AI」でしょう。
みなさんの会社ではAIが勝手に業績を上げてくれると、まるで魔法の杖のように考えておられる方はいないでしょうか。新技術に振り回されることって結構ありがちですよね。
目に見えるもの(新技術)よりも、目に見えないもの(組織文化)の方が、企業を飛躍させるうえで重要という戒めのように思います。
劇的な転換はゆっくり進む
本書でビジョナリーカンパニーの比較対象になっている企業では、考え抜かれた新しい方針を頻繁に打ち立て、それも「従業員の動機づけ」のために派手に発表し宣伝することが多いということでした。これは、はずみ車を押し始めてもすぐにそれをやめて方針を変え、逆の方向に押し始めるという右往左往を繰り返し、持続的な勢いを作り出せないまま悪循環と呼ぶ状態に陥っていくと例えられています。
ビジョナリーカンパニーでは、準備段階から突破段階に移行するパターンを常にたどっていると説明されています。巨大で思い弾み車を回転させるのに似て、当初はわずかに前進するだけでも並大抵ではない努力が必要ですが、長期にわたって一貫性を持たせて一つの方向に押し続けていればはずみ車に勢いがつき、やがて突破段階に入るという教えです。
苦しい準備段階を飛び越して一気に飛躍する方法はない、ということですね。。。
お読みいただき、ありがとうございました。